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1970年代後半、色の再現性や保存の問題といった技術的な問題もほぼ解消され、アメリカの新しい世代の写真家たちが、カラー写真を表現の手段として利用していこうとする流れが定着していくようになります。
1976年にニューヨーク近代美術館で開催されたウィリアム・エグルストンの個展がきっかけとなり、70年代後半には、多くの写真家たちがカラー写真を使い始めるようになりました。
このムーヴメントは、写真評論家サリー・オークレア著「ザ・ニュー・カラー・フォトグラフィ(1981)のタイトルから、「ニュー・カラー」と呼ばれるようになります。
それまで、カラー写真は芸術作品ではないという評価を、美術界からは受けていました。
「ニュー・カラー」はそれまでの写真芸術の規範を大きく覆す事件であり、世界の写真家たちに大きな影響を与えました。
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ウィリアム・エグルストン
William Eggleston(1939年-)
1939年テネシー州生まれ。
大学時代にアンリ・カルティエ=ブレッソンやウォーカー・エヴァンズの写真集に影響を受けて写真家を目指し、1960年代からカラー写真に専念します。
1976年、ニューヨーク近代美術館にて、同館で初めてのカラー写真家の個展が開催され、カラー写真の芸術家として高い評価を得ました。
アメリカ南部の風景や生活を、カラー写真で絵のように表現しています。
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スティーブン・ショア
Stephen Shore(1947年-)
1947年、ニューヨークで生まれます。
17歳のときにアンディ・ウォーホルのファクトりーの常連となり、ウォーホルやその取り巻きたちの写真を撮影し、23歳の時にメトロポリタン美術館で個展を開催しました。
カラー写真の分野のパイオニアで、写真の世界における無類の先駆者と言われる写真家です。
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ジョエル・マイヤーウィッツ
Joel Meyerowitz(1938年-)
1938年、ニューヨーク生まれ。
オハイオ州立大学で美術を学び、卒業後アート・デレクションやデザインの仕事を行い、その後写真家へ。1963年からスナップ・ショットやカラー風景写真などを発表して高い評価を得ます。
現在では、アメリカ写真界のニューカラー写真分野で、ウイリアム・エグルストンらとともに代表作家のひとりとして評価されています。
2001年9月11日に発生した同時多発テロの現場、世界貿易センタービル倒壊跡地を9ヶ月にわたり撮影したことでも有名です。
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ジョエル・スターンフェルド
Joel Sternfeld(1944年-)
1944年ニューヨーク生まれ。
1970年代からアメリカの日常風景を鋭くとらえる、ニューカラーの写真家です。
郊外の住宅地やショッピングセンター、牧草地、リゾートなど、アメリカの風景を独特のカラーフォトで表現しています。
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リチャード・ミズラック
Richard Misrach(1949年-)
1949年カリフォルニア生まれ。
40年以上にわたって砂漠の環境の変化を記録するなど、アメリカの社会や文化の問題を、カラー写真で表現しています。
アメリカの現代フォトグラファーのなかで、最も影響力のあるひとりと言われています。
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ヘレン・レヴィット
Helen Levitt(1913年-2009年)
1913年、ニューヨーク・ブルックリン生まれ。
1930年代から、アンリ・カルチェ=ブレッソンのスタイルに影響を受けたモノクロの、ニューヨークのスナップフォトを撮影。1940年代に高い評価を受けています。
1959年と1960年にニューヨークのストリートをカラーで撮影し、1970年代にもカラーにて撮影、1974年にニューヨーク近代美術館でスライドショー形式で作品が紹介されています。
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ジョン・ファール
John Pfahl(1939年-)
1939年、ニューヨーク生まれ
1970年代から活躍する、アメリカの社会や文化の問題を、シリーズのランドスケープ・フォトグラフで表現しています。
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ルイス・ボルツ
Lewis Baltz(1945年-)
1945年、カリフォルニア生まれ。
サンフランシスコ・アート・インスティチュートで学び、1956年から写真家としての活動を開始し、1970年代後半からトポグラフィックな風景写真を撮影しています。
荒廃と破壊の美しさを感じる風景写真が特徴です。
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ジョン・ ディヴォラ
John Divola(1949年-)
1949年、ロサンゼルス生まれ
1978年から79年にかけて、海辺の室内風景を撮ったシリーズ「Zuma」で高い評価を得ます。
1995年から98年にかけて、南カリフォルニアの砂漠地帯で撮影された「Dogs chasing my car」を発表。
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レオ・ルビンファイン
Leo Rubinfien(1953年-)
1953年、シカゴ生まれ。
カリフォルニア・インスティテュート・オブ・アーツ(写真専攻)、イェール 大学大学院(写真専攻) などに学び、1970年代末に写真家として活動を開始。
ニュー・カラーの、最も若い担い手のひとりとして評価されています。
アメリカ同時多発テロ事件以降、2002年から6年にわたって、ニューヨークをはじめ、ロンドン、マドリッド、モスクワ、イスタンブール、東京など、近年テロ事件の起きた世界各地の都市を訪ね、ストリートスナップの手法で、街を行きかう人びとの顔を撮影、写真集「傷ついた街」を発表。
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ミッチ・エプスタイン
Mitch Epstein(1952年-)
1952年、マサチューセッツ、ホールヨーク生まれ。
ニューヨーク・クーパー・ユニオンで、ゲイリーウィノグランドの生徒として学びます。
1970年代にインドを撮影した写真集を発表。1992年から1995年までベトナムを撮影。
2004年から2009年まで、アメリカの国土でいかにエネルギーが生産され消費されているかというテーマに撮影し、2009年に写真集「American power」を発表しています。
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ジャン・グルーヴァー
Jan Groover(1943年-)
1943年、ニュージャージー州生まれ。
1970年オハイオ州立大学卒業。
フランス在住の、テクノロジカルなカラーの静物写真を得意とする女性写真家です。
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日本における芸術写真の始まりは、1905年ごろと考えられます。
秋山轍輔(1880―1944)が1904年ゆふづつ社を結成し、ピクトリア
リズムの代表的技法となったピグメント法を研究しました。
大阪では1904年にアマチュア団体浪華写真倶楽部が創立され、現在ま
で続いています。
1920年淵上白陽の日本光画芸術協会、1923年鈴木八郎らの表現社、
1924年福原信三の日本写真会などの団体が続々と結成。
1921年「カメラ」、「写真芸術」、1924年「フォトタイムス」な
どの写真雑誌が発刊されます。
1929年、上田備山の丹平写真倶楽部、1930年、中山岩太の芦屋カ
メラクラブ結成。
1930年、「フォトタイムス」誌主幹の木村専一が新興写真研究会
を結成し、ヨーロッパのアバンギャルド写真を紹介し、日本にもモ
ダニズムが開花します。1932年、野島康三と福原信三による月刊写
真雑誌「光画」を創刊します。浪華写真倶楽部の安井仲治が都市風
俗を繊細鋭利なリアリズムで追求。
小石清は都会人の精神的ストレスを超現実主義的手法でとらえます。
1933年、ドイツでルポルタージュを学んだ名取洋之助が日本工房を
設立。「光画」や日本工房に参加した木村伊兵衛が登場。堀野正雄
は機能主義美学にたって機械的建造物の構造美に迫り、渡辺義雄は
新即物主義的な作風で建築や都市風俗を撮りました。
土門拳は日本工房に参加後、社会的リアリズムを踏まえつつ、古寺、
仏像、人物、社会問題などを撮って民族の伝統とその課題に迫りました。
戦後、木村伊兵衛、土門拳、濱谷浩は新しい姿勢で写真活動に復帰。
林忠彦はたくましく復興する戦後を描き、秋山庄太郎や大竹省二は
ファッションや芸能、芸術の世界へと、三木淳は「ライフ」誌のスタ
ッフ写真家として国際的に活躍しました。
1959年、川田喜久治、佐藤明、丹野章、東松照明、奈良原一高、細
江英公が自主的な制作活動の拠点としてのグループ「VIVO(ビボ)」
を結成します。
東京オリンピックの開催を契機に、立木義浩、篠山紀信、横須賀功光、
早崎治らがファッション性豊かな雑誌で活躍。
長野重一が秀逸な作品を生み、富山治夫は風刺のきいた時評写真を撮り、
桑原史成と英伸三は社会の現実を撮ります。
高梨豊、中平卓馬、森山大道らは「プロヴォーク」を1968年に刊行し、
自我の本質を問う作品、都市とその生命感のダイナミズムを問う作品を
制作しました。
1980年代には出版文化は盛況で写真家の活躍の場は多く、カメラ、写真
感光材料メーカーの設けたギャラリーが写真作品発表の場として活況。
入江泰吉の記念館ともいえる奈良市写真美術館はじめ写真部門をもつ美
術館が相次いで開館しました。
植田正治や杉本博司、柴田敏雄らは完成度の高い鑑賞性の高い写真を撮り、
荒木経惟は都市、エロス、死生観を世に問い、自身の変幻を写真にする
森村泰昌、若い人気女性写真家ヒロミックスや蜷川実花らが登場します。
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藤原新也
星野道夫
HABU
HIROMIX(ヒロミックス)
ハービー・山口
19世紀初頭に発明されたカメラ・オブスクラからダゲレオタイプ、カロ
タイプなどから始まる写真技術は、当初、産業革命の頃の中産階級の肖
像画が欲しいという需要と記録写真の時代でした。
19世紀中頃から写真技術が、コロジオン法の登場やタルボットの方式
(ネガポジ方式)を経て、1880年代のコダックのフィルム・カメラの
登場により写真は市場に乗り、さらに1925年に登場した35mmカメラ、
ライカなどによって一般的に広まり、その写真人工の増加により、写真
は写真技術や機械の発展とともに芸術として進化し始めました。
黎明期の写真家としては、ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タル
ボットの手軽なスケッチの手段として写真を用いたり、エドワード・
マイブリッジによる馬の連続写真が有名です。
19世紀後半から、絵画的な写真を求め、芸術としての写真を目指す写真家によって始め
られた運動、ピクトリアリスムが多くの写真家に支持されました。
1902年には、ニューヨークでピクトリアリスム標榜する写真家のグループ、フォト・
セセッションがアルフレッド・スティーグリッツ、エドワード・スタイケン、アルヴィン
・ラングダン・コバーン、フランク・ユージンらによって結成されました。
ウィーン分離派のハインリッヒ・キューンやカール・ストラスなども参加しています。
1910年頃から、ピクトリアリスムに対して絵画の模倣にすぎないという意識が強まり、
ピクトリアリスムを否定し、写真にしかできない視線で写真作品は制作されるべきとい
う思想が生まれます。アルフレッド・スティーグリッツらにより主張された、ストレー
トフォトグラフィよ呼ばれる、ぼかしや演出、合成などを用いることなく、見たままの、
あるがままの風景、人物を表現する新しい様式が出現します。
アンセル・アダムス、イモージン・カニンガムなどのグループf/64の写真家、アンドレ・
ケルテス、アンリ・カルティエ=ブレッソン、アウグスト・ザンダー、ウォーカー・エ
ヴァンズなどが、ストレートフォトグラフィを表現手段として用いた写真家として知ら
れています。またヨーロッパにおいてはバウハウスの芸術家、ラースロー・モホリ=ナ
ジに見られます。そしてストレートフォトグラフィとは別に、ヨーロッパでは未来派、
ダダ、シュルレアリスムなどの動きと連動して、写真独自の技巧、フォトグラム、フォト
モンタージュ、ソラリゼーションなどの技法を用いた、マン・レイをはじめとする前衛
的な写真が登場しました。この写真表現の出現によって、広告写真やファッション写真
がこの時期に大きく発展していきます。
19世紀後半のクリミア戦争、アメリカ南北戦争から始まったといわれる報道写真は、
写真技術・印刷技術の発展とマスメディアの発展により1920年頃から大衆に支持さ
れ始めます。第二次世界大戦前から、1936年の雑誌ライフの創刊や1947年のマグナ
ム・フォトの設立など、フォトジャーナリズムは現在まで写真史における重要な位置
を占めています。ロバート・キャパ、マーガレット・バーク=ホワイト、ウォーカー・
エヴァンズ、ユージン・スミスなどが有名です。
1960年代頃から、「写真の中では報道写真がもっとも優れている」という神話が崩れ
始め、写真作品は、それぞれの分野で進むべき方向が多種多様になり、ある時期ある
時期を捉えて、ある種の傾向でくくることができなくなります。
コンセプトが重要視され、写真が外見だけで判断されず、その背景にあるものを含め
て評価されるようになり、様々な表現方法が出現しています。
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ロバート・キャパ
Robert Capa(1913年10月22日-1954年5月25日)
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デヴィッド・ハミルトン
David Hamilton(1933年4月15日-)
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ロバート・メイプルソープ
Robert Mapplethorpe(1946年11月4日-1989年3月9日)
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リンダ・マッカートニー
Linda Louise McCartney(1941年9月24日-1998年4月17日)
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マン・レイ
Man Ray(1890年8月27日-1976年11月18日)
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アンセル・アダムス
Ansel Adams(1902年2月20日-1984年4月22日)
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ブラッサイ
Brassai(1899年9月9日-1984年7月8日)
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ウジェーヌ・アジェ
Jean-Eugene Atget(1857年2月12日-1927年8月4日)
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ユージン・スミス
William Eugene Smith(1918年12月30日-1978年10月15日)
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ロベール・ドアノー
Robert Doisneau(1912年-1994年)
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セバスチャン・サルガド
Sebastiao Salgado(1944年-)
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エド・ヴァン・デル・エルスケン
Ed van der Elsken(1925年3月10日-1990年12月28日)
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デュアン・マイケルズ
Duane Michals(1932年2月18日-)
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ヴィム・ヴェンダース
Wim Wenders(1945年8月14日-)
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アンドレ・ケルテス
Andre Kertesz(1894年7月2日-1985年9月28日)
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ヤン・サウデク
Jan Saudek(1935年5月13日-)
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デヴィッド・リンチ
David Keith Lynch(1946年1月20日-)
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エリオット・アーウィット
Elliott Erwitt(1928年7月26日-)
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アンリ・カルティエ=ブレッソン
Henri Cartier-Bresson(1908年8月22日-2004年8月3日)
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ラリー・クラーク
Lawrence Donald Clark(1943年1月1日-)
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ベル・エポックを謳歌する世紀末パリの写真家ナダールによって撮影された
華麗な衣装で身を飾った上流階級の人々や著名人がファッション写真の先
駆けと言われます。
20世紀前半の、ファッション写真を掲載した2大雑誌「ヴォーグ」と「ハーパ
ース・バザー」により、多くのファッション写真が配信され、その後、現在に
いたるまで数多くのファッション写真家を輩出し、様々な手法やスタイルの、
芸術性の高いファッション写真が創造されていきました。
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リチャード・アヴェドン
Richard Avedon(1923年5月15日-2004年10月1日)
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アーヴィング・ペン
Irving Penn(1917年6月16日-2009年10月7日)
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ウィリアム・クライン
William Klein(1928年4月19日-)
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ヘルムート・ニュートン
Helmut Newton(1920年10月31日-2004年1月23日)
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ハーブ・リッツ
Herb Ritts(1952年8月13日-2002年12月26日)
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ピーター・リンドバーグ
Peter Lindbergh(1944年11月23日-)
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ブルース・ウェーバー
Bruce Weber(1946年3月29日-)
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パオロ・ロヴェルシ
Paolo Roversi(1947年-)
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ニック・ナイト
Nick Knight(1958年-)
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マリオ・テスティーノ
Mario Testino(1954年-)
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サラ・ムーン
Sarah Moon(1941年-)
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ベッティナ・ランス
Bettina Rheims(1952年-)
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サム・ハスキンス
Samuel Joseph Haskins(1926年11月11日)
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エレーン・ヴォン・アンワース
Ellen von Unwerth(1954年-)
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スティーヴン・マイゼル
Steven Meisel(1954年-)
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エドワード・スタイケン
Edward Steichen(1879年3月27日-1973年3月25日)
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デヴィッド・ラシャペル
David LaChapelle(1963年3月11日-)
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デヴィッド・ベイリー
David Royston Bailey(1938年1月2日-)
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サンテ・ドラジオ
Sante D’Orazio(1956年1月23日-)
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ジャンルー・シーフ
Jeanloup Sieff(1933年11月30日-2000年9月20日)
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マーク・ボスウィック
Mark Borthwick(1966年-)
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ヴォルフガング・ティルマンス
Wolfgang Tillmans(1968年8月15日-)
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テリー・リチャードソン
Terry Richardson(1965年-)
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パメラ・ハンソン
Pamela Hanson(1954年-)
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ランキン
Rankin(1966年-)
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