中国の陶磁器の歴史
■ 中国の陶磁器の流れ
中国では焼成温度が1000度以下の焼物を陶器、1000度以上のものを磁器と呼んでいます
■新石器時代(紀元前6500-紀元前1500年頃)
中国で土器が作られたのは紀元前7000年頃といわれています。
中国北部、黄河流域の文明が発達したことに伴い最古と思われる土器が作られました。ここに陶磁の原点を置き、さらに紀元前3000年頃にはすでに彩りとさまざまな模様のある作品が確認されています。
色彩によって“紅陶”、“白陶”、人間・動物や魚、幾何学的な模様が見られる“彩陶”ほか、これらは総じて“仰韶文化”と呼ばれています。
これらは祭事などの特別な目的があって作られ、殆どが一般的には使用されていなかったと考えられています。
仰韶文化から約1000年〜1500年後に起こった龍山文化は黒陶文化とも呼ばれ、黒陶・灰陶と言われる薄く技術の高い陶器が生活の中にも用いられました。
■殷(15世紀BC-10世紀BC)、周(11世紀BC-256BC)、春秋戦国(770BC-221BC)、秦(221BC-210BC)
殷時代に入ると、施釉の技術が加わり、“灰釉土器”が登場しました。また窯の進歩で、より高温での焼成が可能になり、中国での磁器の定義(施釉、1200度以上の高温で作成ほか)に沿うものが出てきたこの時代の出土品を“原始磁器”または“原始青磁”と呼んでいます。まだ完全な青磁と呼ぶには未熟な段階でした。また春秋時代末から戦国時代にかけて、幾何学印文硬陶(施釉なしの硬質土器)の最盛期でもありました。戦国時代以降には、秦始皇帝陵の兵馬俑に代表される灰陶、加彩灰陶(灰陶に赤、黒、白などの彩色を加えたもの)の俑が大量につくられています。
■漢(202BC--220)
青銅器のような金属加工品や、漆製品の台頭で陶磁器の進展はわずかでした。それでも後漢の頃になると、現在でも人気のある“青磁”や唐三彩のルーツとなる“緑釉陶”ほか、“鉛釉陶”の生産が始まります。700〜800度前後の低音で焼成される“鉛釉陶”は色鮮やかな作品になり、副葬品として流行します。
■三国(222-280)、晋(265-316)、五胡十六国(304-439)、南北朝(439-589)
後漢時代から南北朝時代にかけて作られた青磁は作風、技法等に共通点も多く、特に中国東部浙江省の埋葬地から発見されたものを中心に“古越磁(古越州)”と呼ばれています。この時代、陶磁器は副葬品としての役割がメインと思われますが、南北朝時代頃から、機能的な壺や盤といったものが増えて生活器としての使用が増えていったと考えられます。
■隋(581-618)、唐(618-907)、五代(907-960)
漢時代に生まれた“鉛釉陶”の技術が進み、多彩な釉薬の色から褐色、緑、黄色ように三色を施された“唐三彩”が生まれました。人、動物、楽器や建築物などモチーフは多岐にわたり、当時の文明の様子が伺えます。青磁の発達と同じくして、中国北部を中心に“白磁”も生産がさかんになりました。白磁は鉄分の少ない白い素地に不純物の少ない精良な釉薬(透明)をかけて1200度以上の高温で還元焼成したものです。河北省内丘県邢窯が唐代の代表的な白磁窯です。
北宋(960-1127)、金(1115-1234)、南宋(1127-1279) 元(1271-1368)
宋時代は中国の陶磁器の歴史の中でも最盛期である言われています。これまでに育まれてきた技術を用いて、中国各地で青磁や白磁がさかんに生産されました。特に優れた陶磁器の生産した“定窯”“鈞窯”“官窯”“汝窯““哥窯”は五大名窯と呼ばれています。質の高い青磁を作り出した“汝窯”は宮廷向けにのみ生産され、そこからはじかれたごく一部のものだけが販売されたことから、当時から非常に稀少であり、現在は市場に出回ることはほぼありません。大陸、海上と貿易がさかんになったことと、名品が多数生産されたことで陶磁器は輸出品として重要な位置になりました。白磁に模様を描いた上で、無色の釉薬をかけて高温に仕上げた“青花”がイスラム圏で好まれたことなどが有名です。
■明(1368-1644)
明時代を代表するのは、中国最大の陶窯“景徳鎮窯”です。漢の時代からの歴史ある生産地として、宋時代じは青白磁、元時代には青花が作られていました。明時代には、官窯(権力者、政治家などが管理する陶窯)で磁器を中心に生産し、ブランドとしての地位を確立していきます。
現在でも評価の高い“豆彩”“五彩磁器”などが生産され、官窯が廃止になり民窯へと移ってもその技術は継承され、発展しました。
中国美術の中でも今回記事として取り上げましたやきもの、陶磁器関連の作品集や展覧会の図録は重点商品として幅広く取り扱いをしています。買取も積極的にしていますので、中国美術書や陶磁器の作品集、解説書をお売りされる際にはご相談ください。
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「清盛世瓷選粹 故宮博物院蔵 Selected Porcelain of the Flourishing Qiing Dynasty」
著者名 :馮先銘, 耿寶昌
出版社名:紫禁城出版社
発行年月:1994年12月
サイズ :363ページ 30×22×3cm
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ハードカバー
テキスト:中国語、英語
清代最盛期、康熙・雍正・乾隆帝時代の陶磁器を紹介する1冊。
青花、五彩、黄地三彩、紅釉などの名品が、100点カラー掲載されています。
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「魅惑の清朝陶磁」
開催 :2013-2014年 京都国立博物館ほか
サイズ :263ページ 30×23×2cm
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ソフトカバー
清から海外への輸出に使われた沈没船の引き上げ品、江戸時代の遺跡から見つかった出土品をはじめ、日本人が愛した民窯製品のおおらかさや、近代日本の陶工が好敵手と認めた官窯の名品などを紹介します。
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「碗の中の宇宙 曜変天目茶碗の研究と成果」
著者名 :安藤堅
出版社名:新風書房
発行年月:2003年9月
サイズ :119ページ 26×18cm
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曜変天目茶碗は世界に3つだけしか残っていない貴重な宝物で、この世のものとは思えない美しさを秘めた傑作として知られています。著者が、化学研究の経験をもとに、科学と芸術を融合させようという意気込みで夢の「曜変天目」を再現しようと試み、ついに芸術作品を完成させるまでの研究の経緯を記した一冊。
(本文)
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中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「Sotheby's Important Chenghua Porcelain from A Private Collection」
出版社名:Sotheby's
発行年月:1999年
サイズ :50ページ 28×22×1cm
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サザビーズのオークション目録。明代・成化帝時代の中国陶磁器の貴重な名品が、2点カラー掲載されています。
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「中国陶磁 出光美術館蔵品図録 二重箱入り」
編集 :出光美術館
出版社名:平凡社
発行年月:1987年4月 初版
サイズ :374ページ 35×27×4.5cm
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ハードカバー
以下目次より-----
・図版
中国 図1?970
朝鮮・ベトナム・タイ 図971?1103
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「陶枕百選 夢へのうつわ 林原美術館旧蔵 中国歴代陶枕コレクション」
著者名 :井上雄吉 前坂規之 中村圭吾 井上修吾 浅野文子
出版社名:井上オリエンタルアートほか
発行年月:2012年3月
サイズ :19×27×1.5cm
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ハードカバー
中国、唐代から宋代に至る陶枕を、100点カラー掲載しています。
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「中国の緑釉・三彩を楽しむ」
開催 :2011年 愛知県陶磁資料館
サイズ :95ページ 30×21cm
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ソフトカバー
中国の緑釉・三彩 鉛釉陶器の歴史
図版
シルクロードの香り
中国、近くて遠い国
中国古陶磁に学び、そして遊ぶ
中国人の色彩観 ほか
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「中国陶磁名品展 イセコレクションの至宝」
開催 :2012年 石川県立美術館
サイズ :160ページ 30×21cm
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中国古代から唐、宗、元、明代を経て清代までの名品が、121点カラー掲載されています。
唐三彩、景徳鎮窯、龍泉窯、磁州窯、釣窯ほか。
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「清朝工芸の美 秀麗な清朝陶磁を中心に」
開催 :1992年 大阪市立美術館
サイズ :103ページ 26×18cm
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清時代の華やかな陶磁作品265点をカラー掲載しています。
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「東洋陶磁史 その研究の現在 東洋陶磁学会三十周年記念」
出版社名:東洋陶磁学会
発行年月:2002年5月
サイズ :350ページ 31×23×3.2cm
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1.中国陶磁
白磁の成立と展開
越州窯と龍泉窯
宋官窯について
耀州窯の位相
天目再考
景徳鎮官窯の成立
明の五彩
清の官窯
2.日本陶磁
近世の瀬戸・美濃
楽焼
肥前陶磁器研究の成果
明治陶芸の様式展開
3.朝鮮半島の陶磁
高麗から朝鮮時代へ
高麗茶碗
4.東南アジア・西アジアの陶磁
ベトナム陶磁
クメール・タイ・ミャンマーの陶磁
西アジアの陶磁
ほか
函入り、350ページ、約3.2cmの厚さがある、厚みのある本
中国の陶磁器関連の作品集や関連書籍
●「黒と白のやきものを楽しむ」
出版社名:愛知中国古陶磁研究会
発行年月:2014年
サイズ :96ページ 30×21cm
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2014年に愛知県陶磁美術館で開催された展覧会の図録です。磁州窯、耀州窯はじめ天目茶碗など、黒及び白のやきものを、126点カラー掲載しています